鼻と肺はひとつの気道：アレルギー性鼻炎と喘息を一緒に治す治療

アレルギー性鼻炎と気管支喘息。この2つは一見まったく別の病気に見えます。しかし実際には、「One airway, One disease（1つの気道、1つの病気）」と表現されるほど、密接な関係があります。近年は、その共通したメカニズムを踏まえた治療戦略が注目されており、特に舌下免疫療法などの特異的免疫療法（アレルゲン免疫療法）が注目されています。

アレルギー性鼻炎と喘息の密接な関連

鼻と肺は、ひと続きの「気道」です。そこに存在する粘膜や免疫細胞は共通しており、アレルゲンへの反応も似ています。実際に、疫学研究からは以下のことが分かっています。

アレルギー性鼻炎を持つ子どもの 30〜40％前後が将来的に喘息を発症
喘息を持つ患者の 70〜80%に鼻炎症状が合併
鼻炎と喘息を併せ持つ患者では、どちらか片方だけの患者に比べて症状が強く、治療のコントロールが難しい

鼻炎が悪化すると鼻づまりによる口呼吸が増え、乾燥した空気が気管支を刺激して喘息症状が悪化しやすくなります。鼻炎を適切に治療することは、喘息管理にも直結するのです。
つまり、たとえ今鼻だけがつらくても、「将来的に喘息になるかもしれない」「すでに気管支で静かな炎症が起きているかもしれない」 — そんな見方で、気道全体を早めに評価・治療することが、“呼吸の将来”を守る鍵となるのです。こうしたデータから、現在の国際ガイドラインでは「鼻と肺をひとつの気道としてとらえ、両方をまとめて診ていく」ことが推奨されています。

特異的免疫療法は喘息にも効果が期待できる

特異的免疫療法（舌下・皮下）は、原因となるアレルゲンを少量ずつ体に慣らし、免疫の反応性を改善する治療です。
従来の薬物療法（抗ヒスタミン薬、吸入ステロイドなど）は「症状を抑える治療」ですが、
免疫療法は「アレルギー体質そのものに働きかける治療」と位置づけられています。
特に以下のような効果が報告されています：

喘息症状の改善
気道過敏性の低下
必要な吸入薬の量が減る
喘息の増悪（発作）の減少

ダニアレルギーを背景にした喘息では、治療推奨の一つとして国際ガイドライン（GINA）にも位置づけられています。鼻炎治療のつもりで始めたら「喘息も良くなった！」というケースは実臨床でも多いのです。

未来を守る：発症と重症化の予防効果

さらに注目されているのは、将来のアレルギー発症を減らす可能性です。

鼻炎から喘息への進展を防ぐ
新たなアレルゲンへの感作を抑制

特に若年の患者ほどこの効果が期待され、小児花粉症に対する研究では、治療群で将来の喘息発症率が低下したと報告されています。
これは、免疫の発達段階に介入することがアレルギーマーチ（アレルギー疾患の連続性）の流れを変える可能性を示唆しています。

安全性と治療継続の重要性

もちろん、免疫療法はメリットだけの治療ではありません。

効果発現までに数か月
3〜5年間の継続が必要
アレルゲンを用いるため副反応への安全管理が不可欠

しかしながら、適切な患者選択と医療機関による管理のもとで実施することで、
長期的な利益が期待できる治療として高く評価されています。
今の症状を楽にするだけでなく、未来の健康も守る。
これこそが、特異的免疫療法の大きな魅力です。

アレルギー性鼻炎や喘息でお困りのお子さんが、より呼吸しやすく、健やかな毎日を送れるよう、エビデンスに基づいた治療選択を一緒に考えていきましょう。