喘息（ぜんそく）は、気道（空気の通り道）に慢性的な炎症が起こり、発作的に気道が狭くなることで「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という音を伴う呼吸困難や咳などの症状が現れる病気です。大人にも見られますが、小児では特に多く、発症は乳幼児期から始まることもあります。気道がまだ細い赤ちゃんにとっては、わずかな腫れや粘液の増加でも呼吸が苦しくなりやすいのです。
乳幼児喘息の主な誘因は、風邪などのウイルス感染です。特にRSウイルスやライノウイルスといったウイルス感染後に繰り返し「ゼーゼー」したり、咳が続くケースが多く見られます。また、アレルギー体質（アトピー）がある子や、両親が喘息や花粉症などのアレルギー疾患を持っている場合、発症リスクが高まるとされています。タバコの煙、ダニ、カビ、ペットの毛、寒冷刺激なども喘息を悪化させる環境因子として知られています。
ただし、5歳以下の子どもは風邪のたびにゼーゼーすることがあるため、「本当に喘息かどうか」を見極めるのは難しいとされてきました。こうした中、2025年の国際的な喘息治療ガイドライン（GINA2025）は、乳幼児に対しても喘息と診断するための明確な3つの基準を示しました。
その診断基準は以下の通りです：

1. 繰り返す喘鳴や咳の発作があること（発作と発作の間にも喘息様の症状が続く場合も含む）
2. 他の疾患では説明できないこと（肺炎や気道異物、心疾患などが除外されていること）
3. 喘息治療薬への明確な反応があること（吸入薬やステロイドで症状がはっきりと改善する）

これら3点すべてが当てはまる場合、5歳未満でも「喘息」と診断してよいとされています。1～2点のみ該当する場合は「喘息の疑い」として経過を見つつ治療を行っていくことになります。
治療には大きく分けて2つの薬が使われます。一つは「リリーバー（発作治療薬）」で、代表的なのはプロカテロール（商品名：メプチンなど）です。発作時に使用し、気管支を一時的に広げて呼吸を楽にします。もう一つは「コントローラー（予防薬）」で、毎日使うことで発作を起きにくくする薬です。代表は吸入ステロイド薬（ICS）で、炎症を抑える働きがあります。症状が週１回以上ある、夜間に咳き込む、過去に複数回の夜間救急の受診や入院するほどの発作があった、というような場合は、毎日の使用が勧められます。症状が軽い場合は内服薬による予防治療もあります。
吸入薬の使用には専用の補助具「スペーサー」が欠かせません。吸入器に取り付けることで、子どもでも薬を正しく吸いやすくなります。乳幼児にはマスク付きのタイプが使われ、3歳頃からは口にくわえるマウスピース型へ移行していきます。
日常生活では、発作を起こさないための環境づくりが重要です。タバコは完全に避け、ダニやホコリを減らすよう掃除・寝具対策を徹底しましょう。風邪の予防として手洗いやワクチン（インフルエンザなど）も有効です。
喘息と診断されても、正しい管理と治療を続ければ多くの子どもは元気に過ごせます。不安なことがあれば医師と相談しながら、家庭でできる対策と薬物療法をうまく組み合わせて、お子さんの健やかな成長を支えていきましょう。